東京の下町。黒木長作は、15年前妻に先立たれ、一作と花子の二人の子供を男手ひとつで育ててきた。一作は表向き大学を目指して勉強中だが、今年で5浪目。本人にはその気も失せ、長作の目を盗んでは、サブたち仲間とバンドの練習にうつつをぬかしている。長作の会社は花輪製造卸販売会社。川上社長以下、唯一の大卒部長中山、平社員の丸田らでやっている小さな会社である。失敗ばかりやっている長作は、定年を間近かに控え、退職金を楽しみに頑張っていた。長作の夢は、その退職金で戦友の赤垣と、思い出のルバング島を訪れることだった。ある日、長作の家の下宿人で競輪の予想屋、熊沢の紹介で、長作は見合いをした。ところが相手というのは、五十歳になる予想紙売りのキン子。一目散に逃げだす長作。スナックのママ、久美は常日頃長作に心から同情していた。そんな時、長作は久美が金策に困っていることを知った。...