美術・小林喬。効果・寺田尚弘。(原作と比べ)TV作品の方は、主人公がキヨシというより、玉ノ井を具体的に表現する秋吉久美子の女主人公の力点がかかり、当然、彼女の存在感といったものが、全篇の魅力となった。エゴイストで助平で欲張りで気の弱い、この町の住人の情念が、秋吉久美子を中心に、まとまって、ある種の雰囲気をかもしだす。この秋吉という魅力あふれる俳優を、独特の風景のなかで、人物に雰囲気として投影した点は成功である。だが、原作者の滝田ゆうがいうように、「玉ノ井ぬけられます」「ぬけられません」の振幅は、人物の個性の弱さが、いまはない町の雰囲気に負けてしまっていた(鳥山拡「シナリオ」1976/05より)。