函館から夜汽車で北九州に降りた多川明は、地元新聞縮刷版を読むため市立図書館に直行した。十九年前の戸畑市の殺人事件--痴情のもつれ、若い女性、惨殺さる--犯人は彼の父親、蓮三であった。明は、事件の目撃者の一人、万造を訪ね、現場の模様、殺された女の男性関係、そして、裁判で疑問点が多かったが江川良枝という女の証言が決め手になり、それは法廷では問題にならなかったことなどを聞いた。元担当刑事で、今はアル中の斎藤は明に警察を信用してはいけないと助言する。そして、明は北九州新聞に投書し、取り上げてもらおうとした。江川良枝の勤める会社をつきとめた明は、そこヘアルバイトとしてもぐりこみ、彼女に接近する。しかし、明はすぐクビになり、協力的だった図書館員も彼を避けるようになった。目に見えない圧力が彼の囲りに起こり始めたのだ。カギを握る良枝をマークした明は彼女の家に強引に入...